株式会社オプロ

株式会社リクルートライフスタイル

業種: 「サービス」
業務: 「電子文書化」
製品: 「oproarts」

現場の強みを活かしたリクルートライフスタイルの営業構造改革

株式会社リクルートライフスタイル 企画統括室 ICT・セキュリティ推進部 事業システムグループ 河原 宜弘 氏 , 酒井 大樹 氏

河原 宜弘 氏(左)
酒井 大樹 氏(右)

去る6月7日、東京・赤坂インターシティコンファレンスにおいて、オプロ主催によるビジネスフォーラム『Customer Success Forum 2019 経営と現場が変わる「6つの鍵」~ サブスクリプション時代の顧客戦略』が開催されました。本記事ではその中から、株式会社リクルートライフスタイル 企画統括室 ICT・セキュリティ推進部 事業システムグループの河原宣弘氏と酒井大樹氏が登壇した講演「現場の強みを活かしたリクルートライフスタイルの営業構造改革」の内容をご紹介します。

時代の変化に応じた業務構造の改革が必要

販促メディア事業、人材メディア事業、人材派遣事業などを軸に、さまざまなサービスを展開しているリクルートグループ。その事業会社のひとつである株式会社リクルートライフスタイルは、「旅行」や「飲食」など日常消費領域におけるカスタマーの行動支援および、クライアントの業務支援に関する商品・サービスを提供している企業です。グルメ情報サイト「ホットペッパーグルメ」をはじめ、ヘアサロン・リラク&ビューティーサロンの検索・予約サービス「ホットペッパービューティー」、旅行情報サイト「じゃらん」など、国内有数の「B to B to C」マッチングビジネスを展開しています。

営業構造改革に至った経緯について、河原氏は「リクルートグループでは時代の変化やニーズに合わせ、過去60年間にわたって新たな商品やサービスを生み出し続けてきました。これを実現してこられたのは、"営業の力"が極めて大きかったといえます。しかし、弊社を取り巻くビジネス環境は、この20年間で大きく変わってきました。たとえば、少子高齢化に伴う労働人口の減少、商品ニーズの急速な進化・多様化、新旧プレイヤーによる群雄割拠、ダイバーシティ・働き方改革などが挙げられます」と語ります。

同社においても、約20年前の営業行動は、まずは行動量を重視するものでした。しかし近年、時代の変化に応じた業務構造の改革が必要と考えたそうです。

すべての営業業務を対象に業務工程のBPR・IT化を目指す

根本的な営業業務の構造改革を行うにあたり、まずは組織設計として「人材ポートフォリオの再定義と業務チャネルの再設計」を実施。営業に求めるコア役割・業務の定義を再確認し、周辺業務のセントラル分業化を目指しました。また、業務設計においては「業務工程のBPR・IT化」により、理想的な営業行動モデルを定義、オペレーションの最適化、ITソリューションのフル活用を検討。さらにルールとして「各種法令・ルール改定および、その周知徹底」を掲げました。こうした中で、河原氏と酒井氏が所属する企画統括室では、すべての営業業務を対象に業務工程のBPR・IT化を目指したのです。
「リクルートはボトムアップのちからを尊重する社風なので、ともすると『現場主導』『個別最適』『短期視点』に偏りかねません。しかし、これでは視野が狭くなり、全社的な構造改革ができないため、あえてトップダウンによるポリシー『経営視点』『全体最適』『中長期』を掲げました」(河原氏)

ヒアリングで感じた経営者層と現場とのギャップ

ここで酒井氏は、SFA/CRM基盤構築の社内事例について紹介しました。「ホットペッパーグルメ」を運営する飲食事業部は、営業組織数が北海道から沖縄まで50拠点以上におよぶ事業部です。この飲食事業部では従来、メール/Excel/ファイルサーバをベースとした情報共有・情報管理が主流でした。
そこでまずは、2015年に中長期視点での業務/システム全体像を検討したそうです。新システムの概要は、点在している情報をクラウド基盤「AWS(Amazon Web Services)」へ集約し、情報のマート化とヘルススコアの算出が可能な環境を構築。データ連携ツール「Data Spider Cloud」で鮮度の高い情報連携を行うとともに、CRMツール「Salesforce」で行動ログの取得やプッシュ型での行動サジェストを実現するというものです。さらにデータハンドリングツール「ViewFramer」を用いることで、ダッシュボードの整備とデータ加工業務を排除。BIツール「Tableau」による分析環境の構築も目指しました。

同社では「目指すべき姿」へ至るため、3つのステップに分けて取り組みを開始しました。STEP1で「情報の一元管理/高頻度でのデータ連携」、STEP2では「情報のモニタリング・分析基盤の構築」、そしてSTEP3で「営業の行動ログの取得/ヘルススコアの導入」を行うというものです。
「しかし、実際に現場でヒアリングをしてみると、確かに、目指すべき姿に対する期待や合意は得られましたが、その一方で、"新たな業務やツールに対する不安感"の大きさも、実感したのです」(酒井氏)

"現場の力"を加えてデータの価値をさらに向上

社内での調査結果を受け、構造改革にはまず"不安感の払拭"と"価値の実感"が必要不可欠だと考えた同社では、より身近な業務をターゲットにした"STEP0"というフェーズをあえて設けました。それまでファイルサーバとExcelで運用していた定常業務を、Salesforceに移管することから始めたのです。すると、現場における業務やシステムの変更に対する温度感が少しずつ変化し、不安感も減少していったそうです。
酒井氏はまた、その際に現場から挙がった「Salesforceは表示項目を各自で変更できるのが嬉しい」という声にも、注目しました。さらに深堀りすると、それは「担当エリアによって情報項目の重要さと優先順位は異なる。こういった細かい変更が営業活動では成果を生む。」というものでした。酒井氏は、「単なる自動化・効率化」ではなく、「現場の力を最大限に活かせる仕組み」が必要だと考え、現場での柔軟性を取り入れていきました。一例として、クライアントへお渡しする効果情報レポートは、「システムから定型で直接配信」ではなく、「営業担当者がExcelで出力し、クライアントにお伝えしたいポイントを踏まえてカスタマイズし、補足しながら直接ご提案」という方式にした、などが挙げられます。
「"現場の力"を加えることで、データの価値をさらに上げることが可能だと考えたのです」(酒井氏)

現場にある個別の優れた知見を活かす

こうして同社では、約3年をかけて、目指すべき姿に近づくことができました。そして現在では音声解析など、次の新たなステップへの着手を開始しています。
業務改善における重要ポイントについて、酒井氏は「まずは現場に入り込み、現場の思いを身を持って感じることです。そして最初から最短ゴールに向かわず、大きな変化を受け入れられる風土を作り上げていきます。さらに、現場の強みを最大限活かした仕組みを作ることが大切です」と語ります。

さらに河原氏は、「弊社ではこうした学びを何度も繰り返し、ポリシーを見直しながら、進化してきました。全体最適を目指すことは重要ですが、決してそれだけではなく、現場にある個別の優れた知見を活かしつつ取り組むことが大切です。リクルートの強みである『営業の力』『現場の力』とタッグを組む重要性を実感しました。」と語ります。
こうした5年間の成果として、各事業に対する営業支援基盤の構築はほぼ完了。現在はその活用フェーズへと向かっています。
最後に河原氏は「私たちの仕事は、すぐにわかりやすく結果が出てくることは、なかなかありません。ただ、3年経てば、きっと誰もが感謝を抱いてくれるようになると思っています。そこに誇りをもって取り組んでいきたいですね。」と語り、講演を締めくくりました。