利用者の人生に寄り添う人たちの想いを護りたい
超高齢化社会を支える企業に必要なDX推進
(右から)執行役員 管理本部長 水田 成洋氏
経理部 原田 真佑氏
在宅での医療や介護サービスを円滑に行うスケジュール管理ツール「ZEST SCHEDULE」をはじめ、在宅医療・介護業界のDXを推進する株式会社ゼスト。一人ひとりの人生に寄り添い向き合う医療・介護従事者の「一人ひとりの人生を護りたい」という想いを護るべく、テクノロジーの力による管理業務の効率化などを支援している。同社は展開するサービスの契約管理にオプロの「ソアスク」を導入した。少子高齢化社会の中、ますます需要が高まる在宅医療・介護サービス。それに伴う業界からのニーズに応え、自らも成長を続ける同社の中で「ソアスク」がどのように活用されているのかを、執行役員 管理本部長の水田氏と経理部の原田氏に伺った。
- 【課題】一人ひとりに向き合う時間を最大化する そのためのDX推進を支援したい
- 【選定】決め手はフローの明確さ 運用に落とし込んだイメージができた
- 【運用・評価】契約数は導入当初の"4倍" 作業工数は"変化なし"を実現
- 【今後】充実した医療・介護サービスに必要な「リージョンファースト」を実現する
【課題】一人ひとりに向き合う時間を最大化する そのためのDX推進を支援したい
「住み慣れた自宅で過ごしたい」と願う一人ひとりの人生に向き合う在宅医療・介護従事者。その業務はハードワークで知られている。株式会社ゼストは、一人ひとりの人生に寄り添い向き合う時間を増やしたいと願う従事者の想いを実現すべく、煩雑な業務をテクノロジーの力で効率化。在宅医療・介護業界のDX推進を通じて、拡大し続ける業界への需要を支えている。
「在宅医療・介護事業所の訪問スケジュール自動作成クラウド『ZEST SCHEDULE』、経営指標の可視化ツールの『ZEST BOARD』、ケアマネジャーやソーシャルワーカーとの情報連携をサポートする『ZEST MEET』を提供しています。現在社員は40名ほどですが、業界の需要増に伴うサービス拡大で、弊社の人員も増えている状況です。私は管理本部長として、今回『ソアスク』を導入した財務経理部門含めコーポレート部門全体の統括をしています。」(水田氏)
在宅医療・介護業界の需要の高まりに連動して事業が拡大している同社。業界ニーズに対応していく中で40名という社員数は少ない印象を受ける。事業のきっかけは何だったのだろうか。
「もともと弊社の前身の会社が、別の業界向けのスケジュール管理ツールを開発・展開していました。最初は本当にスケジュールの管理機能のみだったのですが、それを医療・介護業界に横展開したのがはじまりでした。このサービスに着目したファンドが、もっと業界の課題解決につながる総合的なサービスとして事業展開をしたいと増資を引き受け、会社の経営体制も一新し現在のゼストとなりました。」(水田氏)
背景にあるのは2025年問題だ。
「国民の5人に1人が後期高齢者となる超高齢化社会を迎える中で、介護難民が発生すると。しかもこの先どんどん増えていくわけですから、早いうちに課題解決しないといけないのは目に見えています。そこで、業界の人材不足を稼働不足と捉え、既存の在宅医療・介護従事者のパフォーマンスを最大限に発揮する為に、AIを用いた訪問スケジュールの最適化を通じ、業界のDXを推進してきました。その延長で、訪問スケジュールは在宅医療・介護事業所にとって経営の根幹であるとわかり、先述した『ZEST BOARD』など経営・運営の改善につながるプラットフォームへと進化させてまいりました。」(水田氏)
【選定】決め手はフローの明確さ 運用に落とし込んだイメージができた
社会的課題の解決に向けて取り組むゼスト。次に、同社が「ソアスク」を導入するに至った経緯を伺った。
「新経営体制での再出発当初は取引先も少なく、個々の契約情報や請求情報はスプレッドシートで管理できる規模でした。ただ、足元の事業拡大のスピードから、そのようなアナログな管理方法はいずれ限界が来ると考えていました。というのも、弊社の取引では、料金プランも多岐に渡り、取引先様の利用状況に合わせたアップセルの提案も行う等契約内容が画一的ではありません。これを個別にスプレッドシートで管理するとなるとかなりの工数を要するし、人的ミスも発生することは容易に想像が付きます。顧客数が少ないうちから顧客数が1,000や2,000になることを想定して、ツール導入に踏み切ることにしました。」(水田氏)
水田氏がツール導入に踏み切ったのには、他の思いもあったという。
「以前勤めていた企業で、サービスの料金プラン変更を同業他社と同日発表したことがありました。その時、私たちは発表当日からの料金変更手続きができたんですが、他社は翌日にならないと変更できなかったんです。システム対応が追い付いていなかったことが、大きな機会損失につながった。営業戦略に対して、我々バックオフィスがタイムリーに合わせていく大切さを知っていたことも、判断に影響していますね。」(水田氏)
ツール選定には「ソアスク」以外も挙がったという。
「Webで調べて、オプロを含め2社ほどお会いしました。外資系ベンダーのサービスは日系特有の業務フローに合わずカスタマイズが必要になったりその分コストがかかったりと、導入の手間を考えると見合わないと思っていたので除外し、日系の2社に限定しました。」(水田氏)
その中で「ソアスク」を選んでいただいた決め手は何だったのだろうか。
「見積提案、契約管理から請求管理までの一連の業務フローが一気通貫にできる点とフローが明確だった点ですね。当社の導入前の業務フローに合わせやすく、運用に落とし込むイメージができました。また、将来1,000や2,000件の契約を抱えることを想定しつつ足元の状況も考慮した導入・運用コストも大きな決め手となりました。」(水田氏)
【運用・評価】契約数は導入当初の"4倍" 作業工数は"変化なし"を実現
実際に現場ではどのように運用されているのだろうか。原田氏に伺った。
「現在、もともと運用していたCRMツールと並行して使っている状況です。導入当初はどちらにも顧客情報を入れるというフローにバタバタしましたが、今では安定した運用になっています。『ソアスク』は法人の下に事業所が紐づく体系となっていますが、CRMツールは事業所や部署単位になっており、法人単位の情報が見られないんです。そのため、両方運用しているものの、現状では取引先企業管理は『ソアスク』がベースになっています。」(原田氏)
使い勝手はどうなのだろうか。
「契約内容が画一的でないので、スプレッドシートで管理している契約情報と請求額に齟齬がないかを管理本部長がレビューしたうえで請求書を発行していました。『ソアスク』では見積り作成時に入力された情報を引き継いで請求書が作成されるので、確認にかかる工数が削減できました。」(原田氏)
さらに、原田氏が一人で担当されているという請求書作成・発行にかかるお話を伺った。
「私が経理部門に来た時、ちょうど『ソアスク』への移行時期だったため、以前のフローと比較してスムーズに請求書の作成と発行ができるようになったと実感しています。導入当初から現在では請求書発行数が3~4倍になっているのですが、作業工数は変わっていません。特に日割り計算ができるようになってから格段に楽になりました。月中スタートの契約は最初の請求書発行タイミングがイレギュラーになりますが、導入当初はイレギュラーな請求タイミングが次月以降に引き継がれないようシステム修正が必要でした。それが自動になって便利になりました。」(原田氏)
さらに水田氏からは、営業活動における支援機能としての活用をお話しいただいた。
「『ソアスク』での業務フローの運用は落ち着いてきたところで、フィールドセールスやカスタマーサクセス等顧客対応をしている担当者の業務負担を軽くできるような仕組みを導入したいと考えました。例えば、契約終了の3か月前に担当営業にプッシュ通知が行くようになっています。そのタイミングで契約更新を認識すれば、契約更新に対して早めに準備ができ、交渉時にアップセルにつながる提案を行いやすい状況になります。他にもそれまでに蓄積された顧客企業のデータに基づいて、有効な提案ができるCSツールとしての活用も拡大していきたいと考えています。」(水田氏)
【今後】充実した医療・介護サービスに必要な「リージョンファースト」を実現する
最後に今後の展望や、オプロや製品への期待について伺った。
「財務管理を行う立場としては、もう少しSaaSの売上管理に適用できる機能が欲しいかなと思いますね。先ほど少しお話した割引や割増など月額が一定じゃない取引などは、会計管理上の数値の取り方ができるとか。今はここが手作業になってしまうんですが、サブスク管理ツールとしてはぜひ補完していただきたい機能です。」(水田氏)
さらに、今後の同社の事業展開についてお話しいただいた。
「今後、提供しているツール『ZEST』を収益改善プラットフォームとしてさらに進化させていく予定です。その第一弾として『空き枠管理』をリリースしました。これまでスケジュールの中で空き枠の可視化に課題を感じている事業所様の声が多かったんです。在宅医療・介護では枠が空いていても、その前後のスケジュールによって対応できる時間や地域が限定されてきます。いかに効率的に訪問ルートを構成するかも重要な要素になるわけです。」(水田氏)
同社は、今回の空き枠機能を皮切りに、今年冬には、事業所の存続に不可欠な地域連携を強化し、引き合いを増やすための機能をリリース予定だ。
「『ZEST』は、訪問スケジュールの自動作成機能を基盤としていますが、より簡単かつ効率的なスケジュール作成を支援するだけではありません。スケジュール作成過程で蓄積されるデータを活用し、事業所の収益最大化をサポートする機能を積極的に拡充していく予定です。今後より一層充実を求められる業界だからこそ、我々の技術力でできる限りの支援をしていきたい。加えて、『ソアスク』に蓄積されるデータを活用して、CS観点のご提案ができるようになるとより良いなと。そういった側面でも今後とも『ソアスク』には期待しています。」(水田氏)
利用者の環境に寄り添い、一人ひとりの状況に対応が必要な在宅医療・介護サービス。今後は利用者が求めるサービスが、ケアマネジャーなどを軸にすべて連携されていくことが求められる。その「利用者ファースト」「リージョンファースト」な環境を構築するゼストを微力ながら支えていければと思う時間となった。