株式会社オプロ

株式会社ユーザベース

業種: 「情報通信」
業務: 「販売・購買」
製品: 「ソアスク」

Salesforce上で稼働するB2B SaaS事業の業務基盤として活用
見積から請求までを一括管理できるサブスクリプション管理「ソアスク」

株式会社ユーザベース

株式会社ユーザベース
執行役員 経営基盤担当 張替 誠司氏(右)
IT Strategy Division 加藤 孝祐氏(左)
IT Strategy Division 石川 藍氏(中)

「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」というパーパスを掲げる株式会社ユーザベースでは、B2B事業向け顧客戦略プラットフォーム「FORCAS」を提供している 。この業務基盤として採用しているのが、Salesforce上で稼働する、見積から請求管理までを行うサブスクリプション管理サービス「ソアスク」だ。その経緯について、グループ執行役員 経営基盤担当 張替 誠司氏、IT Strategy Division 加藤 孝祐氏および石川 藍氏にお話を伺った。

記事の要約
  • 【課題】属人化したカスタマイズで保守維持や可用性、ビジネス拡張の面で課題が山積
  • 【選定】Salesforce上で動作するがゆえに確実なリリースとガバナンスの担保が可能に
  • 【運用・評価】複数事業を同時に管理できる、拡張性の高い業務基盤を整備
  • 【今後】B2B SaaS領域へのさらなる拡張とともに、カスタマーサクセス活動への展開も

【課題】属人化したカスタマイズで保守維持や可用性、ビジネス拡張の面で課題が山積

2008年に創業し、「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」をパーパスに掲げる株式会社ユーザベース。経済情報を人とテクノロジーの力で整理・分析・創出し、ビジネスパーソンの生産性を高め、創造性を解放するべく、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」をはじめ、B2B領域の各種プラットフォーム「FORCAS」「INITIAL」や、エキスパート・ネットワーク事業「MIMIR」、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」など多彩なサービスを展開、経済情報を通じて世界中の意思決定を支えるための事業を強力に推進している。

数多くのB2B SaaS事業を展開する同社では、各事業のシナジーを高めながら価値創出を行っていくべくホールディングス全体で機能集約を図ることで経営基盤の強化を進めており、その中心的な役割を果たしているのが張替氏だ。「Salesforceを中心に事業基盤を整備していますが、事業がそれぞれ立ち上がってきた経緯もあり、実装やオペレーションは統合されていない部分も少なくありません。そこで、標準化を図りながら、複数プロダクトを横断的に提供できるような拡張性のある事業基盤の整備に現在尽力しています」と張替氏は語る。

株式会社ユーザベース 張替 誠司氏

そんな同社において、高い成長率を誇っているのが、法人ビジネス特化の企業データベースで顧客理解を深めることに貢献するB2B事業向け顧客戦略プラットフォーム「FORCAS」だ。140%を超える売上高成長率を誇るFORCAS事業の事業基盤もSalesforce上に構築されており、リード獲得から商談管理プロセスはSales Cloudを、見積や売上、請求管理含めたプロセスはカスタマイズによって構築されてきた。

そんなFORCAS事業においては、以前から課題が散見されていた。Salesforce導入当初はカスタマイズを駆使して環境整備していたが、現在は初期実装したメンバーがおらず、保守維持や可用性の観点からリスクが顕在化。新たなパートナーが運用し続けることも困難で、リソース確保が難しい状態が続いていたという。「高い成長率を続けている事業だけに、お客さまからのニーズも指数関数的に増えていきます。もともとFORCASは同時アクセス数やユーザー数、分析モデル数などの変数で料金が変わっていますが、基本パッケージにプラスして、ユーザー数の追加やオプションの追加といった要望にシステム側が応えられない状況でした」。仕様を変えようにも、リソースが確保できないため、抜本的なリファクタリングが必要だったのだ。

当時の状況について加藤氏は「初期に設計した販売プロセスが、完全にプログラムで表現されており、ビジネス環境の変化に対応しづらい状況でした。メンテナンスだけで売り方を変えていけるような環境が求められたのです」と語る。結果として、販売パターンが増えるたびに、商品のマスターを新たに追加せざるを得ない状況にあったという。「途中解約などイレギュラーに近いオペレーションの際には自動処理できず、状況を理解している人間が正しくメンテナンスする必要がありました。組織がスケールしていくなかでは、属人的な運用を回避し、誰でもメンテナンスできるような仕組みが求められたのです」。

【選定】Salesforce上で動作するがゆえに確実なリリースとガバナンスの担保が可能に

そこで、Sales Cloud上で行ってきた商談管理プロセスはそのままに、販売管理や契約管理などカスタマイズ部分に関して新たにサブスクリプションでの販売管理に適したソリューションを検討することに。しかし、候補に挙がったどのソリューションも、同社が求める仕様を全て満たしている状況ではなかったのだ。「外貨対応や自動契約更新など、それぞれ機能の有無が異なっており、全ての要求を満たすプロダクトは存在しませんでした。そこで、我々の理想をある程度コミットしてくれるかどうかという視点で検討を進めました」と加藤氏。

Salesforceとの柔軟な連携が可能な複数のソリューションのなかで注目したのが、Salesforce上で動くオプロのサブスクリプション管理サービス「ソアスク」だった。「バックオフィス業務として必要な、SaaSの販売管理を行うベストプラクティスにしたいという気持ちが当初からありました。その意味では、業務委託の個別開発ではなく、一緒にパッケージに落とし込んでいただけるパートナーが必要でした。その想いに応えてくれたのがオプロだったのです」と加藤氏。オプロ側からもソアスクを機能拡張していきたいという意思があり、エンハンスも含めて一緒に進めていくことに。

株式会社ユーザベース 加藤 孝祐氏

張替氏が重視していたのは、確実にリリースできるかという点だ。一緒に機能拡張していく前提ではあるものの、本来必要な機能がパッケージに搭載しきれないリスクも当然出てくる。「万一の場合、自分たちでカスタマイズできないと、プロジェクト自体が頓挫してしまう可能性も。AppExchangeを使ってSalesforceとプロダクト本体をデータ連携するプロダクトが多いなか、ソアスクは完全にSalesforce上で動作するという独自性の強いソリューション。ソアスクで開発されない機能は一時的にSalesforce標準カスタマイズとして実装し、そのあとパッケージに寄せていくこともできる。Salesforceネイティブであることは大きなポイントの1つ」と張替氏は力説する。全てができるわけではないものの、何とかできる領域が広いことは魅力だったのだ。

特に今回の業務基盤は、マーケティングや営業の効率化といった基盤整備ではなく、ガバナンス上のリスクも発生するような基幹業務に相当する。「別サーバで動く場合は個別に監査法人のレポートが必要で、監査の面でも独自に統制環境を整備せざるを得ないなど割高になってしまう。Salesforce上で動くソアスクであれば、内部統制の有効性報告書などが依拠でき、製品や基盤部分の信頼性も十分確保できると考えました」と張替氏。

結果として、Salesforceをカスタマイズして構築してきた環境から脱却し、サブスクリプションにおける契約管理にソアスクを採用することになったのだ。

【運用・評価】複数事業を同時に管理できる、拡張性の高い業務基盤を整備

現在は、セールスを中心に100ライセンスほどでソアスクを活用し、見積管理や契約管理、売上管理、請求管理などを行っており、商品DBや価格表などの情報もソアスク内で管理している。年間契約の顧客も多いため、請求書ベースでは毎月数百枚ほどを帳票サービス「oproarts」にて発行、年商ベースで15億円規模の商材をソアスクで管理・運用している状況だ。請求書のデリバリーについては郵送代行サービス「ソアスク@」、メールでのPDF送付にはクラウドストレージ「oproarts Drive」を活用している。「販売管理だけでなく、帳票作成や請求書のデリバリーまで含めてオプロで完結できるのは類似プロダクトと比較しても差別化ポイントになる」と加藤氏。

ソアスクでは料金プラン管理が柔軟で、今では商品の切り売りが容易になっているという。「ユーザー数の追加や分析モデルの拡張、API連携といった、お客さまの要望に対して、きちんと切り売りできるようになったのは大きい。商材が増えることで社内からはすごく喜ばれています」と張替氏は評価する。また、他社のサービスと組み合わせたオプション販売なども柔軟に追加、提供できるようになったことで、事業提携に向けても積極的に動けるようになったと効果を実感しているという。

さらに、営業の生産性向上に貢献するユーザー数課金の「FORCAS Sales」など、新たな課金モデルへの対応も同じプラットフォームで管理できるなど、事業成長に大きく貢献していると張替氏は高く評価する。「もともとマーケティング部門向けに開発されたID課金型のFORCASが、徐々にユーザー数課金が必要な営業部門向けにもすそ野を広げています。複数の商品や課金体系を1つのプラットフォームで管理でき、将来的には課金構成も柔軟に変更していけるような拡張性の高い環境が整備できています」。

ソアスクリリース後は少工数、短期間での新サービスリリースが可能になった。「過去のシステムでは、おそらくFORCAS Salesのような新サービスもリリースするまで相当な工数と期間がかかったはず。パッケージにビジネスロジックを任せられるようになったのは大きな効果です」と加藤氏は力説する。「実際に新たなサービスをリリースする場合、過去のシステムではリファクタリングと改修が必要で、ソアスクを使った対応とは比較にならない工数規模になっていたはずです」と加藤氏。ソアスクであれば、営業部門との事前確認やデータ移行などの作業を除けば、商品の性質などマスターメンテナンスを行う数時間の作業で、新たなサブスクリプションサービスの管理を始めることができるようになっているという。石川氏も「パッケージが入っていない状態で新たなサービスを管理対象に加えるのは非常に大変です。ソアスクがあるおかげで、サービスリリースに合わせて同じ基盤で管理できるようになりました。契約履歴なども見やすく、昨年からの経年変化なども追いかけやすい」と評価する。

株式会社ユーザベース 石川 藍氏

情報活用の面では、以前のシステムでもMRR(Monthly Recurring Revenue)などクラウドサービスにおけるKPIは抽出できたものの、変動部分をうまく切り出すことが難しかった。「プロダクト単位や契約単位といった軸で、前月比でどの程度MRRに変化があったのかといった数字も把握できるようにエンハンスしてもらっています。前後関係も含めての変動が追いかけやすい構成を意識しました」と加藤氏。なお、解約理由などカスタマーチームが必要とする情報はSalesforceのカスタムオブジェクトに顧客情報のカルテを作成しており、ソアスクのオブジェクトと連携して値動きなどと連動させた情報も確認可能だ。

株式会社ユーザベース 加藤 孝祐氏

1年がかりのプロジェクトにおいては機能のエンハンスだけでも30を超える規模の大掛かりな拡張が進められたが、オプロのプロジェクト遂行力を高く評価する。「エンハンスとインプリ、そしてデータ移行という3つを並行させるという驚きのプロジェクトでしたが、うまく併走いただけながら進行ができて感謝しています。必要な機能が足りなくてリリースが難しい困難な状況でも、きちんと対応いただいて無事にサービスインできました」と石川氏。加藤氏も「4回ほど大きなバージョンアップがありましたが、その都度構成が変わってしまうため、うまく進めていかないと手戻りも大きくなります。それを最小限におさえるべく、事前にオブジェクトの構成を適切に見極めながら、一緒に進めていくなかで何度も助けられました」と高く評価する。「リソース確保のためにパートナーも巻き込みながら、プロジェクト管理も柔軟に実施できました。Slackでの情報共有やBacklogでのチケット管理なども含め、管理方法も変更しながら柔軟に進めていただけて感謝しています」と張替氏の評価も高い。

【今後】B2B SaaS領域へのさらなる拡張とともに、カスタマーサクセス活動への展開も

今後については、現状FORCASにおける業務基盤として活用しているソアスクについて、SPEEDAやMIMIRなどB2B SaaSの領域に拡張していくことも視野に入れている。「他のサービスについては、今後もスクラッチで開発していくのか新たにパッケージを利用するのかという選択はその都度必要になりますが、確立した業務プラットフォームとしてソアスクは選択肢の1つ。少なくとも新規事業や新規のセールス環境を整備する際にはソアスクが大きなアドバンテージとなってくるはずです」と張替氏。もちろん、ソアスクのさらなるエンハンスが必要な領域も残されており、今後も継続的な環境整備を続けていきたいという。

株式会社ユーザベース 張替 誠司氏

また、顧客ごとにマイページを設けてサービスの契約状況や利用状況が把握できるような環境づくりについても検討したいという。「すでに弊社のプロダクトとして持っているものもありますが、ソアスクのいち機能として実装することもあり得ます。お客さまにとって使い勝手のいい環境を見極めながら、有力な選択肢として検討したい」と加藤氏。

現状は会計システムとはSalesforceのレポート機能を使ったCSVによる連携が中心となっているが、APIでの連携などさらなる自動化に向けた環境づくりにも取り組んでいきたいと意欲的だ。「現状は月次処理にて会計連携を行っていますが、ソアスク内の販売管理と連携してリアルタイムにつなげていくことも想定しています。月次の着地が早期に把握できれば、先行投資の判断材料にもなってくる。迅速な投資が事業成長を速めていくことにつながるため、実績見込みが早期に把握できる環境は整備していきたい」と張替氏。他にも、継続性があってアップセルが見込める業種や特定の企業に対して受注率などの情報を分析するなど、カスタマーサクセスの活動を最適化するようなロジックも組み込んでいきたいと今後について語っていただいた。

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