商談から見積、契約、請求まで一気通貫で管理し業務効率5倍に
車両管理クラウドサービスの「売る」ための営業基盤を構築
法人向け自動車リース事業やレンタカー事業に加え、モビリティ社会を見据えた新たなモビリティサービスの創造・提供を手掛けるトヨタモビリティサービス株式会社。同社は社用車の運用管理をデジタル化するサービス「Booking Car」の営業活動の拡大にあたり、オプロが提供するサブスクリプション管理サービス「ソアスク」を採用した。ソアスク導入の経緯と導入後の効果について、フリートカンパニー ソリューション推進部 モビリティサービス推進ユニットの小宮 光徳 氏、森 大祐 氏、茂木 美樹氏、企画管理ユニットの小坂 昌美氏にお話を伺った。
- 【課題】会社初の自社開発サービスの拡大に向け、新たな基幹システムの構築が急務に
- 【選定】開発工期の短さやコストの低さオプション追加とすべての条件を満たす
- 【運用・評価】人為的な販売管理のミスがなくなり、請求書発行の業務効率5倍に
- 【今後】DX推進で生まれたリソースを「販売」強化へ活用
【課題】会社初の自社開発サービスの拡大に向け、新たな基幹システムの構築が急務に
トヨタ自動車直営の法人営業会社であるトヨタモビリティサービス株式会社(以下、TMS)。会社設立の狙いは、新たなモビリティサービスの創造、提供だ。従来、「所有」するものだった車だが、現在はシェアリングなど「使いたいときに、使いたい分だけ車を使う」サービスのニーズが高まっている。100年に1度の大変革期を迎える自動車業界。トヨタグループは自動車をつくる会社からモビリティカンパニーへ生まれ変わろうとしている。そのような中で全国8,000社のお客様の移動を支えるTMSでは誰もが安全で環境にやさしい社会、SDGsの達成に向けてモビリティサービスの開発・提供をいち早く進めてきた。
具体的なサービス内容は、カーリースを始め、レンタカー、カーシェアリング、シェアサイクル、自動車保険、通信事業、ソリューションサービス、中古車販売など。「これからも新たなモビリティサービスの開発に挑戦し、みなさまの『移動』をサポートしていきたいと考えています」と小宮氏は語る。
今回ソアスクを導入することになったBooking Carは、社用車の運用管理をデジタル化するサービスだ。利用者は専用アプリで簡単に社用車を予約できる。また運行状況のデータもクラウド上で自動生成されるため、紙で社用車を管理するのに比べて運行管理業務を大幅に圧縮できることがメリットだ。
また、社用車のプライベート利用を可能にすることで、従業員のES(従業員満足度)向上に貢献するサービスでもある。これまで社用車は平日の終業後や週末には遊休資産と化すのが普通だった。この社用車を、コストを一部負担するかたちで従業員向けに解放。利用料を車両の維持管理費にあてればコスト削減にもつながる。「社用車の運用管理にあたる従業員の生産性のみならず、従業員の働きやすさ向上や、会社とのよりよい関係づくりの点でも役立つサービスです」(小宮氏)
フリートカンパニー ソリューション推進部 モビリティサービス推進ユニット 小宮 光徳 氏
一方、Booking Carは、TMSが初めて取り扱う自社開発サービスである。従来からのTMSの基幹システムでは対応できず、新たなシステム、新たな運用体制の構築が急務だった。
全体像として思い描いていたのは、Booking Carを「売る」ためのシステムだ。「当社として初めての自社開発サービスを私たち少人数のユニットが管理するには、最初の商談から、見積もり作成、契約、サービス開始、毎月の請求書発行、その他の後工程などを含めた商談管理、契約管理の業務を一気通貫で管理できるシステムが必要でした」と森氏。また、いずれは見込み顧客に関連する情報もシステム上で管理することで効率的に契約につなげたいという狙いも。
同時に、現場で業務にあたる森氏らを最も苦しめていたのは、毎月の請求書発行だという。Booking Carの発売は2020年11月。それから2~3カ月は、まだ契約社数が少なかったこともあり、エクセルによる手作業で管理していた。「毎月の締め日のたびに請求内容を確定させて、請求書を作成、お客様に送付するという作業を、ほぼ1日のうちに終えなければならないのに、それが全部手作業。月初の作業負担はかなりのものでした」(森氏)。一度確定した数字をチェックする作業も手作業で行っていたせいで、ミスも頻発。これから増えていく契約者数に耐えられない業務体制であるのは明らかだった。
フリートカンパニー ソリューション推進部 モビリティサービス推進ユニット 森 大祐 氏
【選定】開発工期の短さや開発にかかる費用オプション追加とすべての条件を満たす
「そんな課題感を以前から付き合いのあった開発ベンダーに相談したところ、まずSalesforceの導入が決まりました」と茂木氏。単にバックオフィス業務を効率化したいだけならSalesforceは不要だが、「Booking Carを売るためのシステム」というゴールを見据えての判断だった。
ソアスクは、その開発ベンダーから提案されたものだ。請求書発行に関わるシステムをゼロからオーダーメイドで開発する選択肢もあった。しかし開発工期の短さやローコスト、また、さまざまな帳票発行ができることや、サブスクリプション以外のオプションメニューの商材も追加できることなど、TMS側の希望を開発ベンダーに伝えたところ、「そのすべての条件を満たすソアスクの導入がベター」との結論に至ったという。
フリートカンパニー ソリューション推進部 モビリティサービス推進ユニット 茂木 美樹 氏
「工期の短さは必須でしたね。Booking Carの発売が2020年11月、翌21年4月から本格的な営業活動がスタートしたのですが、遅くとも21年の下半期には業務システムが完成し、販売拡大に向けて万全な体制を敷くというのが目標でした。すると開発工期は実質半年しかなく、必然的に0からオリジナルのシステムを開発することは選択肢から外れることになりました」と小宮氏も当時を振り返る。
工期は短くても求めるものは大きかった。Booking Carには、直販に加えて全国のトヨタ販売店からもBooking Carを販売したいという声があった。もしヒットすれば一気に大量の受注が見込める。その日に備えて短納期でも耐えうる業務システムを構築する必要があったのだ。
【運用・評価】人為的な販売管理のミスがなくなり、請求書発行の業務効率5倍に
Salesforceの導入により、社内の他部署との連携、また各商談のステータスの管理もSalesforce内で完結するシステムが構築された。
導入してまだ1年だが、現場で営業にあたっているスタッフからは好意的な反応が聞こえてくるという。「営業支援システムが導入される以前、「紙に書くだけ」で商談管理をしていた頃に比べると、導入により営業担当の工数は一見増えたのではないかという捉え方もされていました。そのため浸透まで時間がかかるかもしれないと懸念したのですが、時間を経るごとに、一度データを入力すれば見積もりも請求書発行も顧客とのやりとりもスムーズだ、助かるという認識が広がっているようです」と森氏。
ソアスク導入の効果も、「期待通り」と小坂氏は評価する。データをソアスクに取り込むだけで確定の実績が決まり、ボタンを押せば請求書が作成されるペーパーレスのシステムが完成した。当然、数字のミスはなくなり、上司からの承認もシステム上でもらえるように。精神面でも工数面でも、請求書発行に関する業務は大幅に改善された。「まだ請求書を紙に印刷する作業は残っており、私たちもそのために必ず出社しなければならないのですが、万が一のことがあれば請求書の作成から送付まで、システム上でスピーディーに完結できます。これは当社にとっても、お客様にとってもメリットがあることだと思います」(小坂氏)。
小宮氏によれば「Booking Carの発売直後、完全な手作業で20社分の請求書を発行したところ、約1.5日かかった記憶がある」という。それが今では、同じ時間で約100社分の請求書を出せるように。「単純計算で業務効率が5倍になったということですね。この先ソアスクの運用が安定すれば、業務効率はさらに倍ぐらいになるのでは」と小宮氏は期待を寄せる。
フリートカンパニー ソリューション推進部 企画管理ユニット 小坂 昌美 氏
ペーパーレス化を推し進める一環で、電子署名も導入された。TMSが標準としている電子署名サービスは「Adobe Sign」。もともとソアスクはAdobe Signに対応しておらず、導入が危ぶまれた。「しかしAdobe Signの採用は会社としての方針であり、合わせるべきと判断しました。オプロさんに相談し、無理を言ってAdobe Signをソアスクでも使えるようにしていただきました。本当に助かりました」と森氏は話す。
森氏らのユニットにとって、システム開発は初めての経験。戸惑うことも多々あったという。だがSalesforceやソアスクの特徴は、一度システムを形にしたあとも、フレキシブルに変更が利くこと。「特に今回は、Booking Carの販売とシステム開発が同時並行で進んだわけですが、できあがったシステムを実際に動かしてテストしたり、改善したりの繰り返しで、なんとか乗り切ることができました」と森氏。
ペーパーレス化そのものも大きなチャレンジだった。TMSという会社はまだペーパーレス化の途上にあり、Booking Carがペーパーレス化で先行した。「しかし、Booking Carはひとつの部署内で完結する業務ではないため、他部署との連携は不可欠。『業務効率化にあたり課題となる箇所を洗い出し、解決するための施策や方法」をご指摘いただきながら、システム開発を進めていきました」(森氏)
新型コロナの感染者が増えていた時期だったため、プロジェクト会議や開発はリモートで行われた。これもTMSにとっては初めてのこと。しかし「プロジェクト終了までお会いできなかった方もいたのですが、滞りなく開発を進めていただき、感謝しています」(小宮氏)と、オプロのサポートについても好評価だ。週1回の定例会議により、コミュニケーションの質と量は十分に確保。「業務中に相談ごとが発生した際も、こちらが質問するとすぐに返答していただけるので、テストして調整するときなどもありがたかったですね(小宮氏)
森氏はオプロの「スピード感」にも驚いたという。「当社の業務内容を理解するのが早かったです。リースというサービスは、異業種の方にはややこしいところがあります。例えば、サブスクのサービスは1カ月利用するごとにその分を請求するだけですが、リースはリース物件の引渡しがリース契約のスタートとなり、初回請求分は数カ月分まとめて請求する必要があります。また、請求するタイミングが同じ会社でも支払い月がまちまちである場合、それを請求書上でどう表現するかも苦労するところです。でもオプロさんは、一度私たちがご説明すると『こういう理解で合っていますか』とすぐに意見を返してくれました。 修正が必要な場合も数回のやりとりで十分に理解していただけました」(森氏)
【今後】DX推進で生まれたリソースを「販売」強化へ活用
今後期待されるのは、Booking Carを「売る」ためのシステムとしての進化だ。「ソアスク導入も含めて、DX(デジタルトランスフォーメーション)の目的は詰まるところ『時短」です。では、その時短によって浮いたリソースを何に振り分けたいかというと、Booking Carの『販売』です。システム上に蓄積していく顧客情報も、すべて販売のために生かしていきたい』と小宮氏。
単にバックオフィス業務を管理するシステムではなく、Salesforceとソアスクを導入したのも、Booking Carを「売る」システムの構築をゴールに据えたからにほかならない。その結果、顧客数が数倍に増えても耐えることができるシステムが完成した。次は、このシステムに見合うだけの顧客を確保する番だ。
「確かにソアスクはバックオフィス側のシステムですが、これからは販売を強化するという視点からのサポートもいただけたらなと思っています。引き続きよろしくお願いします」(小宮氏)
森氏も、さらなるサポートをオプロに望んでいる。システムの開発中は、TMSとオプロがお互いに「こうしたい、こうするべき」と議論する機会がたびたびあったというが、運用が始まってからはTMSからオプロに要望する機会が増えている。「でも本来、システムに詳しいのはオプロさん。『こうしたらいいのでは』と私たちが気づいていない点をご指摘いただきながら、今後ともお付き合いを続けていけたらと思っています」(森氏)